須佐之男命(スサノオノミコト)は高天原(たかまがはら)で天照大神(アマテラスオオミカミ)が天(あま)の岩戸に閉じこもる程に乱暴であったため天界を追い払われ、降り立った出雲国の簸(ひの)川上流で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治します。
出会った老夫婦神と娘は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に娘が食べられることを畏れて泣いていたところ助けられたのです。
①【須佐之男命(スサノオノミコト) 八岐大蛇を退治した】日本神話で誕生
須佐之男命(スサノオノミコト)は日本神話(古事記と日本書紀)で登場する天照大神(アマテラスオオミカミ)の二神いる弟のうちの一神です。
天照大神(アマテラスオオミカミ)と弟二神は同じ時に生まれています。
天界には沢山の神々が現れましたが、イザナギとイザナミを残していなくなりました。
天界にいた沢山の神達の中で、伊邪那岐(イザナギ)には男の性別があり、伊弉波(イザナミ)には女の性別があり、神の中で唯一性別がある子孫を残せる神でありました。
神達の中で残ったイザナギとイザナミが矛(ほこ)で海をかき回すと島ができました。
その島でイザナミは沢山の神様を生みましたが、最後に火の神様を生んだ時にイザナミはやけどを負い、そのやけどがもとでイザナミは亡くなってしまいます。
妻の死を嘆き悲しんだイザナギは妻を追って黄泉国(よみのくに/死者の国)に行きますが、イザナギが来たのが遅すぎたためイザナミはもう黄泉国(よみのくに)から出られなくなっていました。
そのためお互いにお別れになります。
地上に戻って来たイザナギは黄泉国(よみのくに)の穢れ(けがれ)を落とすため、みそぎ池(宮崎県宮崎市)で禊(みそぎ/水浴のこと)をしました。
その時左目を洗った時に天照大神(アマテラスオオミカミ)が生まれ、右目を洗った時に月読命(ツクヨミノミコト)が生まれ、鼻を洗った時に須佐之男命(スサノオノミコト)が生まれたのです。
父イザナギは天照大神には高天原(たかまがはら/天の国のこと)を、ツクヨミには夜の国を、スサノオには海原を支配するように言います。
このようにしてスサノオは天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟として、父イザナギが禊(みそぎ)をして鼻を洗った時に生まれました。
②【須佐之男命(スサノオノミコト) 八岐大蛇を退治した】ひどく暴れたため天照大神が天の岩戸に閉じこもった
日本神話の古事記に天岩戸(あまのいわと)の物語があります。
スサノオは父イザナギから海原を支配するように言われていたのですが、亡くなった母イザナミを恋しがり母に会いに根の国(冥界 めいかい/死後の国)に行きたいと言い、海原の支配をせず父イザナギを怒らせます。
スサノオは母イザナミのいる根の国に行く前に天界にいる姉の天照大神(アマテラスオオミカミ)にそのことを告げようと思い、またスサノオは海の支配をしないため父イザナギに追い払われたこともあり、スサノオは高天原(たかまがはら/天界)へ行きます。
しかし天照大神(アマテラスオオミカミ)は高天原(たかまがはら)にスサノオが攻め入って来たと思い、武装してスサノオを追い払いましたが、スサノオは高天原(たかまがはら)を攻めに来たのではないことを天照大神(アマテラスオオミカミ)に理解してもらえます。
そして高天原(たかまがはら/天界)で太陽の女神の天照大神(アマテラスオオミカミ)と弟のスサノオは他の神々と暮らしていました。
しかしスサノオは他の神様の家を壊したり機織りをする家を壊したり、また田畑を壊したりと悪い事ばかりするので、天照大神(アマテラスオオミカミ)は悲しみと怒りで天岩戸(あまのいわと)に閉じこもってしまいました。
岩戸の中は岩でできた洞窟です。
そのため世界は、太陽の女神である天照大神(アマテラスオオミカミ)が姿を見せないことで真っ暗闇になりました。
作物は育たず病気が流行り悪い事が多く起こるようになりました。
神々は相談し長鳴鳥(ながなきどり/鶏)を岩戸の外で鳴かせてみますが、天照大神(アマテラスオオミカミ)の反応はありません。
知恵の神様は考えます。
そして次に天鈿女命(天宇受売命 アメノウズメノミコト)が呼ばれ天(あま)の岩戸の外で踊りを踊り、他の神々が歌い笑いとても賑やかになると、天照大神(アマテラスオオミカミ)は不思議に思い岩戸を少し開けます。
そして自分より偉い神様が八咫鏡(やたのかがみ)に映っていると思った天照大神(アマテラスオオミカミ)は、自分の姿が映った目の前の八咫鏡(やたのかがみ)をよく見ようとします。
その時です。
天照大神(アマテラスオオミカミ)の手を思兼神(オモイカネノカミ)が引っ張り、岩戸の戸を力持ちの手力男神(タヂカラオノカミ)が開けて天照大神(アマテラスオオミカミ)は天(あま)の岩戸から出て来ました。
すると一瞬にして世界は明るさを取り戻しました。
神様達は大喜びです。
そしてスサノオは天照大神(アマテラスオオミカミ)の怒りのために高天原を追い払われ、出雲国(島根県)に降り立つことになります。
天岩戸(あまのいわと)神話の聖地は、宮崎県高千穂(たかちほ)町にある天岩戸(あまのいわと)神社です。
③【須佐之男命(スサノオノミコト) 八岐大蛇を退治した】八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した
高天原(たかまがはら)で神の家や田畑を壊し悪い事ばかりしたため、天照大神(アマテラスオオミカミ)に高天原(たかまがはら)を追い払われたスサノオは出雲国(島根県)の簸(ひの)川上流に降り立ちます。
そこでスサノオは老夫婦神と老夫婦神の娘が泣いているところに出会います。
老夫婦神と娘が泣いている理由は、娘が8人いたのに毎年娘を八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に食べられてしまい、最後に残った娘も食べられるのではないかと怖がっているというのです。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は八つの頭と尾をもち、体は八つの山と八つの谷くらいはあると例えられるくらいにとてつもなく大きく、しかもいつもお腹の部分は血まみれという怪物です。
スサノオは八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したとしたら老夫婦神の娘と結婚したいと申し入れ、老夫婦神にそれが受け入れられます。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は大の酒好きで酒には目が無いので、スサノオは老夫婦神に強い濃度の酒を用意させ、酒樽に酒を入れて八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を待ったところ強い酒の匂いにつられて八岐大蛇(ヤマタノオロチ)がやって来ました。
老夫婦神の娘は頭にさす櫛に姿を変え、スサノオはその櫛を頭にさしています。
そして八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は酒樽に頭を突っ込み酒を飲み酔いが回ると眠りに入り、その時にスサノオは八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を切りつけ退治しました。
退治された八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から85cm程の長さの立派な剣が出てきたため、スサノオは高天原(たかまがはら)にいる天照大神(アマテラスオオミカミ)に献上します。
この八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾からでてきた剣は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)または草薙剣(くさなぎのつるぎ)といわれ、熱田神宮(あつたじんぐう)に祀られています。
また天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸(あまのいわと)から出る時に自分の顔を映した鏡は八咫鏡(やたのかがみ)といわれ、伊勢の神宮の内宮(ないくう)である皇大神宮(こうたいじんぐう)に祀られています。
そして天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸(あまのいわと)隠れをした時に神々が真榊(まさかき)に付けた勾玉(まがたま)は八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)と呼ばれ、宮中に祀られています。
八咫鏡(やたのかがみ)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)またの名は草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は三種の神器(さんしゅのじんき)といわれ、天皇の皇位継承と共に継承されています。
④【須佐之男命(スサノオノミコト) 八岐大蛇を退治した】クシナダヒメと結婚して沢山の子宝に恵まれた
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の退治の時の老夫婦神の娘クシナダヒメは古事記では「櫛名田比売(クシナダヒメ)」と書き、日本書紀では「奇稲田姫(クシイナダヒメ)と書きます。
スサノオが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治する時、老夫婦の娘クシナダヒメは櫛に姿を変えたとされたことから古事記での名前に櫛の文字が使われ、クシナダヒメは水田の女神ということから日本書紀での名前に「稲田」の文字が使われています。
スサノオは八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した後クシナダヒメと結婚し、出雲国(島根県雲南市)に須賀宮(すがみや)を建てそこで暮らしました。
須賀は地名で現在の神社の名前は「須我神社」といい「賀」ではなく「我」という文字を使っています。
島根県出雲市にある「須佐神社」にスサノオの魂が祀られているといわれています。
スサノオは乱暴で神様にしては落ち着きが無く、一見神様にふさわしくないように見られがちですが、誰もが恐れる八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したのですから勇気溢れる神様です。
スサノオはまさに普段の乱暴な気性を、怪物の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するということに生かし、自分がやらないで誰がやるという心意気だったことがうかがえます。
スサノオとクシナダヒメは子宝に恵まれ、子孫の一人が大国主命(オオクニヌシノミコト)であるといわれています。
島根県出雲市にある出雲大社は大国主命(オオクニヌシノミコト)を祀っています。
⑤【須佐之男命(スサノオノミコト) 八岐大蛇を退治した】草薙剣は熱田神宮(あつたじんぐう)の御神体
三種の神器(さんしゅのじんき)の一つの天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)はまたの名を草薙剣(くさなぎのつるぎ)ともいい、熱田神宮(あつたじんぐう)の御神体(ごしんたい)として祀られています。
御神体とは神様が宿る物体のことです。
熱田神宮は愛知県名古屋市熱田区神宮にある神社で、伊勢神宮に次いで格式が高いとされ「熱田さん」とも呼ばれ親しまれています。
熱田神宮は113年に建てられ、御祭神(ごさいじん)は熱田大神(あつたのおおかみ)です。
熱田大神(あつたのおおかみ)とは三種の神器の一つである草薙剣(くさなぎのつるぎ)を御霊代(みたましろ)として寄せられる天照大神(アマテラスオオミカミ)のことだといわれています。
御祭神は草薙剣(くさなぎのつるぎ)ではなく、天照大神そのものでもなく、草薙剣(くさなぎのつるぎ)に御霊(みたま)を寄せられる天照大神(アマテラスオオミカミ)ということです。
少し分かりにくいですね。神社には神様はいなくて神社というところは神様を呼び寄せるところということで理解すると分かりやすいです。
熱田神宮では草薙剣(くさなぎのつるぎ)に天照大神(アマテラスオオミカミ)を呼び寄せ、それを熱田大神というということです。
つまり草薙剣(くさなぎのつるぎ)に天照大神(アマテラスオオミカミ)が御降臨するということです。
神道は古くからの日本固有の宗教で、神社とはもともと神様が御降臨するとされた物体(物や木や石など)の所に建てられた建物だといいます。
固有という言葉は、他から与えられたものではなく元からあること、またそのものだけにあるという特有という意味です。
神道には教祖や経典は存在せず、また一神教ではなく多神教というところに大きな特徴があります。
その中で天皇は八百万(やおよろず/数が極めて多いこと)の神々の中での最高神である天照大神(アマテラスオオミカミ)の直系の子孫であるということから天皇の存在は欠かせない大切なものとなっています。
私は単純に神様が大好きです。
神様見ててねと思いながら物事をすることが癖になっています。
自分はそれが楽しくそれでいいと思っています。
⑥【須佐之男命(スサノオノミコト) 八岐大蛇を退治した】まとめ
日本神話にしても日本の歴史にしても、一人の人物また用いられた物を見てもとても奥深い意味があり、極端に言えば登場人物の一つ一つの動作にまでとても深い意味があるものだと思います。
神話にも歴史にも無駄な部分が無くしっかりとした意味があり、それが次にまたは後世に繋がっていくところに大きな魅力を感じます。
そして神話も歴史もどっしりとしていて、揺るぎの無い日本文化になっているのです。
日本神話も日本の歴史も和風で、日本情緒たっぷりで落ち着きを感じます。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)にも深い意味がありそうで、是非是非深く探究してみたいところです。
天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟のスサノオは何といっても、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したという勇ましさが印象的な英雄です。