お地蔵様はインドで生まれ、正式名称を地蔵菩薩といい慈悲の菩薩像です。
地蔵菩薩はお釈迦様の死後、弥勒菩薩が悟りを開くまでの56億7000万年の間人々を見守ることをお釈迦様から託され大役を果たしています。
六地蔵は六道を意味しています。
①【お地蔵様 慈悲の地蔵菩薩 お釈迦様から大役を託されました】役割
今から約2500年前インドでお釈迦様によって仏教が生まれ、インドで仏教の経典の中でお地蔵様が登場し、お地蔵様の正式名称は地蔵菩薩といいます。
お地蔵様という名はサンスクリット語(古代インドの言語)で大地のことを「クシティ」と言い、胎内という意味の「ガルバ」を合わせた「クシティカルバ」という言葉が由来となっています。
大地のように包み込むという意味で慈悲の力が強いことがお地蔵様の特徴です。
慈悲とは慈しみあわれむ心のことで、人々を楽にするために苦しみを取り除くことをいいます。
お釈迦様がお亡くなりになったあと弥勒菩薩(みろくぼさつ)が56億7000万年後に天界からこの世に現れて悟りを開くまでは仏様が不在になるため、その間は地蔵菩薩がお釈迦様から任せられた「人々を救う」という役目をになっているのです。
人々を守る地蔵菩薩の役目は大役です。
地蔵菩薩の信仰は奈良時代に中国の唐から伝わり、平安時代中期に始まり広まっていき最初は死後の為の信仰を主に行いましたが、次第に神仏習合の波に乗り道祖神信仰に結び付き現世信仰にもなりました。
お墓に設置された地蔵菩薩は死産でこの世に生まれた時には亡くなっていた水子や幼くして亡くなった子供を供養するために設置されたことが始まりです。
地蔵菩薩は立場の弱い者から救うと考えられています。
道祖神とは集落の入り口や峠や辻などに置かれている石像・石塔・石碑・祠(ほこら)のことです。
道祖神は魔除けとして悪霊や疫病神(やくびょうがみ)を追い払い、豊作や子孫繁栄や縁結びなど万(よろず)の願い事を受け入れる道端の神様です。
祠(ほこら)とは神様を祀る小さな殿舎(でんしゃ)のことで、古神道に由来する信仰であったところ、神仏習合により道祖神に関連した仏様である地蔵菩薩も祀られるようになりました。
道祖神では安曇野市(あずみのし/長野県中部の市)が有名で日本一道祖神の数が多く約400体あるとされており、集落に悪霊(あくりょう)を入れない役割を背負い、また旅人の安全を守っています。
道祖神には男女の双体像が多くありますが単体の道祖神も存在します。
仏教ではお釈迦様の入滅後、56億7000万年後に弥勒菩薩が悟りを開き人々を救うと考えられ、それまでの間は地蔵菩薩が人々を救う役目をするといいます。
ここであれあれ?という事態があります。
太陽の寿命は約100億年といわれており、太陽と地球は同じ頃に誕生しており、どちらも誕生してから約46憶年が過ぎています。
そのため太陽の寿命はあと約54億年であり、地球はそれよりもだいぶ前に膨張した太陽のために灼熱になり生命が住めない環境になるといわれています。
そのため56億7000万年後はすでに、限りある寿命の太陽も地球も寿命は終わっているのです。本当に悲しいことです。
太陽や地球に終わりが来るなどということは考えたくありませんが、仕方のないことでこれも定めなのですね。
太陽と地球の寿命を仮に100才とすると今はすでに太陽も地球も46才なのです。
悲しい、本当に悲しいです。
地球上に恐竜が現れたのは今から約2憶3千万年前で、約1億6千万年間栄えた後、今から約6千6百万年前に鳥類のグループだけを残して絶滅しています。
そのことを考えると弥勒菩薩が悟りを開いて現れるという56億7000万年後も、その前に太陽と地球の寿命がくる約54億年後も、気が遠くなるを通り越して思考停止状態になるほど遠い年月です。
そのためあまりに遠いその年月のことは考えず、今を大切にしようと思います。
仏像には位があり上から「如来像」「菩薩像」「明王(みょうおう)像」「天部(てんぶ)像」の順です。
菩薩は悟りを開くための修行中のお姿で、お釈迦様の王子の時のお姿をしており、宝石で飾った冠を被り、または髪を高く結い上げており、ネックレスとブレスレットを付けています。
菩薩像は服装にも煌(きら)びやかさがあります。
弥勒(みろく)とは古代インドで慈悲から生まれた者のことをいいます。
弥勒菩薩は釈迦の入滅後の未来56億7000万年後に悟りを開き仏様になり、それまでの修行の場である天界の兜率天(とそつてん/仏教世界の中央にそびえる山の上空)からこの世に現れお釈迦様の後継者として人々を救うといわれています。
弥勒菩薩が煌(きら)びやかであることに対し、地蔵菩薩は質素で煌(きら)びやかさはありません。
地蔵菩薩が赤い涎(よだれ)掛けを掛けているのは、赤という色には正直な色・魔除けという意味があるためです。
質素な地蔵菩薩に赤い涎掛けが良く似合います。
また地蔵菩薩にお願い事をする時は、涎掛けを掛けたり帽子を被せたりお供えをする習慣があり、地蔵菩薩は子供を守るといわれていたことからも涎掛けを掛けています。
②【お地蔵様 慈悲の地蔵菩薩 お釈迦様から大役を託されました】六道(ろくどう)
人は死後、生前の行いにより六道(ろくどう)のどこに行くかを10人の王に裁かれるといいます。
平安時代(794年~1185年)以降、お寺に置かれた六体の地蔵菩薩(六地蔵)は人々を救うために六道を回り、人々の身代わりになり苦しみを取り除く役割をしてくれています。
地蔵菩薩はまるで生きていて魂があるように見えとても畏れ多いです。
六道とは天道、人間道、修羅(しゅら)道、畜生(ちくしょう)道、餓鬼(がき)道、地獄道です。
① 天道は苦しみがなく明るく楽しい道でありますが、天国ではなく天人(てんにん/天界に住み人間より優れた人)や天女(てんにょ)が住む所で、いずれは死が訪れ、その後は一からやり直しとなります。
② 人間道は人間界です。
人間界での苦しみは唯一仏教を信仰することで救われます。
③ 修羅道は阿修羅が住み、争いや戦いが絶えず苦しみ続ける道です。
④ 畜生道は馬・豚・牛等または鳥や虫等の人間以外の生き物になり生まれる道です。
⑤ 餓鬼(がき)道は飢えと渇きに苦しみ続ける道です。
餓鬼(がき)道はとても悲惨で餓鬼道に落ちたら常に飲食できず、鞭(むち)打たれるのです。
古代インドで飢えと渇きに苦しむ亡き者は餓鬼(がき)と言われ、現在子供のことが「ガキ」と言われるのは子供は食べ物をむさぼるように食べることからきているといいます。
⑥ 地獄道はその名の通りとてつもない苦痛から逃れられない地獄さながらの道です。
人は死後10人の王の裁きを受け六道のどこに行くか決められるといいます。
① 一人目の王・秦広王(しんこうおう/死後7日目に裁く)は仏教の五戒に反していなかったかの裁きをし、全員が針の山を越えます。
そのため草履が必要です。
② 二番目の王・初江王(しょこうおう/死後14日目に裁く)は死者の着ていた衣服をはぎ取り罪の重さを計る木の枝にかけ、死者は枝のしなり具合で罪が計られ裸で三途の川を渡ります。
三途の川を正しく渡ったか裁かれます。
③ 三番目の王・宋帝王(そうていおう/死後21目に裁く)の裁きの内容は性の裁きで、邪悪な性の行いをした者に裁きが下され、男性には猫を女性には蛇(ヘビ)を持たせ、宋帝王の問いに正直に答えないとそれらによる苦しみが与えられます。
④ 四番目の王・五官王(ごかんおう/死後28日目に裁く)は人の五官である目耳鼻舌身が元になる悪行の中の特に嘘に関する裁きを行います。
⑤ 五番目の王・閻魔王(えんまおう/死後35日目に裁く)は冥界(めいかい/死後の世界)の王、地獄の王と言われ、善悪を裁きます。
地蔵菩薩の化身(けしん)ともいわれています。
閻魔王は閻魔大王(えんまだいおう)とも言われ死後35日目の裁きは特に重要です。
⑥ 六番目の王・変成王(へんじょうおう/死後42日目に裁く)は六道に振り分けられた者の審理を行います。
⑦ 七番目の王・泰山王(たいざんおう/死後49日目に裁く)は最終審判をします。
⑧ 八番目の王・平等王(びょうどうおう/死後100日目に裁く)は再審として救済措置を行います。
⑨ 九番目の王・都市王(としおう/一周忌に裁く)は再審を行い、ここで喪が明けたとされます。
⑩ 十番目の王・五道転輪王(ごどうてんりんおう/三回忌に裁く)は最後の再審としての救済措置が行われます。
死後49日目で極楽浄土に行くのか、天道から地獄道までの六道輪廻(ろくどうりんね)に戻されるかが決まります。
輪廻(りんね)とは命あるものが何度も転生し生まれ変わることをいいます。
極楽浄土とは悩みも苦しみもなく阿弥陀如来(まず他人を救うという大乗仏教の精神の仏様の一つ)がいる仏様がおさめる世界のことです。
③【お地蔵様 慈悲の地蔵菩薩 お釈迦様から大役を託されました】まとめ
地蔵菩薩はとても親しみのある今にも動き出しそうなたたずまいで、いつも通りかかる様々な人々を見守り、その界隈の集落の人々の安全と安楽と無事を見守ってくれています。
お釈迦様から頼まれた気の遠くなるような永遠といってもいいような長い年月の人々の見守りは大役です。
お釈迦様は、地蔵菩薩には秘められた大きな力があることを理解した上で自分の代役を頼んだのですね。
地蔵菩薩はこれからもまだまだ集落の見守りや魔除けを果たしていくことを思うと、地蔵菩薩に手を合わせずにはいられない感謝の気持ちになります。
地蔵菩薩はお釈迦様の信仰のとても大切な存在ということを強く意識したいと思います。